フロイント産業の大腸送達技術。次世代型サプリメントへの応用。 機能性食品原料 2022.01.14

当社は製剤機械と医薬品・食品添加剤の研究・開発・製造を行うメーカーです。
1964年、世界初となる「自動フィルム コーティング装置(ペン)」と「フィルムコーティング液(インク)」を開発いたしました。
以来、製剤機械、医薬品・食品添加剤業界のリーディングカンパニーとして今日に至っています。
創業時にさかのぼる製剤機械と医薬品・食品添加剤が連携した「ペンとインクのビジネスモデル」は、研究・開発・製造をとおして育まれた技術を基盤に、製品群(ハード)と製剤技術(ソフト)のビジネスモデルへと発展し続けています。
本記事では、製剤機械・食品添加剤・製剤技術が三位一体となった、フロイント産業独自の「大腸送達技術」についてご紹介を行います。
・大腸送達技術とは
・大腸送達技術の応用・開発例
・まとめ
※本記事は医薬品業界向けでは無く、健康食品・サプリメント業界向けの記事です。
簡単に述べると、「経口投与された錠剤内の特定の物質を大腸まで届ける」技術です。
錠剤は一般的に胃で崩壊が始まり薬効成分が溶け出した後、小腸において薬物分子が吸収されます。
小腸で吸収する事で薬効を最大限に発揮できる物質であれば問題はないのですが、
医薬品業界を中心にDDS(ドラッグデリバリーシステム)が研究されているように、
小腸ではない体内の特定部位で吸収させる事によって「薬効の向上」「生物学的利用性の向上」「副作用の低減」を得られる可能性があります。
今回ご紹介するのはその中でも「大腸」への送達技術です。
当社は「食品添加剤」「製剤機械」「製剤技術」を三位一体とし、大腸送達技術として提供しています。
① 食品添加剤:水系コーティング剤キトコート
② 製剤機械:通気式錠剤コーティング装置
③ 製剤技術
②製剤機械:通気式錠剤コーティング装置
当社は世界初の自動フィルムコーティング装置「FM-2型」の開発・販売から始まった歴史があり、錠剤コーティング装置のパイオニアでもあります。
2021年9月よりご紹介を開始いたしました、錠剤コーティング装置の最新機種HICOATER HV(ハイコーターハイファイブ)は、錠剤コーティング装置として求められる高い機能性だけではなく、省人・省力に寄与するユーザビリティを突き詰め、また、自動制御によるコーティング工程の省人化を実現したコーティング装置です。
錠剤やカプセルなどへコーティングを行う際は、当社の扱う通気式コーティング装置を使用し、スプレーコーティングを行う方式が適しています。
③製剤技術
目的に合わせた放出性を実現させるには、各々のコーティング層の最適な厚さや組み合わせなど適切な製剤設計が肝要であり、製造においては、錠剤間のコーティングのバラつきを抑え、かつ安定的に生産できる製法の確立が必須です。
当社には上記の製品群だけではなく、機械・添加剤の研究・開発・製造をとおして育まれた製剤技術や、製薬会社・食品会社と共に二人三脚で製剤開発を重ね、獲得した知見があります。
また、当社の研究開発の根幹である技術開発研究所には、多様な製剤評価・分析技術を持ったエキスパートや様々な機器を有しています。
三位一体となった技術を用いて製剤化された大腸送達錠剤の例では、in vivo(生体内)試験を行い崩壊挙動を確認した結果、健常成人男性に錠剤を3個ずつ投与した試験すべてで、小腸では崩壊せず、大腸(横行結腸)での崩壊が確認できました。
では、今までご紹介をいたしました大腸送達技術の応用・開発例について、協同乳業株式会社との共同開発事例をとおして簡単にご紹介いたします。
大腸送達させることで生物学的利用性向上の可能性がある物質の1つに、「アルギニン」が挙げられます。
アルギニンはポリアミンを産生するアミノ酸の一種で、アンモニアの除去、動脈硬化予防、勃起機能改善、脳血管性認知障害改善、感染予防などの多様な臨床試験が行われ、良好な臨床試験結果が得られています。
しかし、これらの効果を得るには 2,000~30,000 mg/日 の投与が必要であり、食品からの摂取、もしくはサプリメントの経口摂取による方法ですと、異常な大量摂取によって投薬コンプライアンスが極めて低いことが大きな課題となっていました。
また、高投与を行っても肝臓で尿素サイクルや糖新生へ使われる事から、高い血中濃度を保つことができず、生物学的利用性が悪いとされてきました。
協同乳業株式会社の松本主幹研究員らの研究グループからは、14か月齢からアルギニンを大量投与(6,000mg/日)すると、マウスの寿命が顕著に延長すること(例:メディアン生存期間雄22→29か月齢)が報告されています。
その作用機序は、小腸で吸収されずに大腸に到達したアルギニンが、腸内細菌により効率よくポリアミンに変換されることにあるとされています。
生成された大腸のポリアミンはトランスポーターを介して吸収され、ポリアミンの体内濃度が高まる事も動物とヒトで報告されています。
アルギニンを大腸に届けることでポリアミンが作られる基本特許と、当社の大腸送達技術による製剤加工特許の2つの技術特許による共同開発を行いました大腸送達アルギニン錠においては、通常のアルギニンに比べ、少なくとも8倍以上効率よくポリアミンが便中に生成していることに加え、ごく少量(360mg/日)の投与でも納豆10パック相当以上ものポリアミンが便中に生成する結果となりました。
これにより、多様な臨床試験結果が報告されているものの、苦味が強く、また大量摂取が必要であったために投薬コンプライアンスが低かったアルギニンを、大量摂取から少量の大腸送達アルギニンに置換できる可能性があります。
※参考:生物工学会誌99_99.8_446 桑田英文
当社が製造・販売を行う水系コーティング剤キトコートと、錠剤コーティング装置、そして製剤技術の三位一体となった「大腸送達技術」についてご紹介を行いました。
大腸送達技術の応用・開発例について、協同乳業株式会社との共同開発事例をとおしてご紹介しましたが、大腸送達を行う事で「効果の向上」「生物学的利用性の向上」「副作用の低減」を図ることのできる物質は、世の中に沢山あると考えています。
ご興味のあるメーカー様、是非当社にご相談ください。
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