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OD錠(口腔内崩壊錠)の技術進化と直打法での製造 添加剤 2021.12.20

OD錠(口腔内崩壊錠)の技術進化と直打法での製造

OD錠(口腔内崩壊錠)とは口の中ですぐ溶け、水がなくても服用できるように設計された剤形のことです。
本記事ではOD錠とはなにか、また当社の製品である直打用賦形剤グラニュトール®を併せてご紹介いたします。

OD錠(口腔内崩壊錠)は、舌の上にのせると唾液や少量の水分により数十秒で崩壊するため、小さな子どもや高齢者、嚥下困難な方、水分摂取量を制限されている方が簡単に薬を服用することが出来ます。

一方で、OD錠は速やかな崩壊性が求められることから、普通の錠剤と比べると壊れやすく、また、口の中で錠剤が崩れることにより、原材料の味や食感(ざらつきなど)が不快に感じることも少なくありません。

OD錠の開発には、錠剤硬度の確保と口腔内での速やかな崩壊を両立させること、また薬の服用を容易にすることが重要です。そのために様々な製剤技術が用いられており、それと共に多様な医薬品添加剤が使用されています。

日本の総人口が減少する中で、令和2年の日本総人口に占める65歳以上の割合は 28.7%と過去最高となるに至り*1、ますます高齢化が加速すると予想されています。

こうした中、嚥下困難な高齢者でも服用しやすい口腔内崩壊錠の需要は高まるものと思われます。

近年、高齢化を背景に肺炎で亡くなる人の数が増加しており、その多くが誤嚥性肺炎であるとされています。誤嚥を引き起こすリスクには、食事や胃内容物の逆流などが挙げられますが、医薬品の服用にも注意が必要と言われています。

先に挙げたように、簡単に口の中で素早く崩壊するOD錠は、誤嚥のリスクを低減できるとされています。また、OD錠は服用の際に水がなくても服用できることから、場所を選ばない有用な剤形として、仕事を持つ中年層の患者からも注目されています。

医薬品にとって有効性や安全性はもちろん重要な点ですが、患者がストレスなく容易に医薬品を服用したり、使用できる環境を整えることも非常に重要なことであるといえます。

*1 令和2年国勢調査, 総務省統計局

OD錠を製剤設計する際に特に問題となるのが錠剤の破損です。

開発当初(1980年代)のOD錠はラムネ菓子のように強度が低く、錠剤をシートから取り出す際に欠けてしまうなどの問題がありました。このため、いかにして速やかな崩壊性を確保したまま錠剤硬度を上げるかが大きな課題となりました。
そして、湿潤顆粒を圧縮し乾燥する方法、顆粒を低圧で成形した後に加湿して結合性を高め、再乾燥する方法などが開発されました。

しかし、生産効率や製造コストの観点から、通常の錠剤と同じ強度のOD錠の生産が求められました。そこで、錠剤の製造法の中でも、工程の短縮が期待できる直打法*2に注目が集まりました。

このようにOD錠の技術進化は、その製造方法によりいくつかの世代に分類することができます。

現在、主流となりつつある第三世代の直打法*2での製造においては、できるだけ低い圧縮力で高い硬度と強い崩壊力が得られる添加剤の選択が求められます。

*2 直打法:原料を混合した粉末を直接打錠する、造粒を伴わないシンプルな製造方法。そのためコスト節減が可能で、また熱や水に弱い原料を扱う場合に選択されます。

OD錠の賦形剤としては、薬物との反応性が低いこと、適度な甘みと冷涼感があること、これに加えて吸湿性が低いといった理由からマンニトールが多く使用されています。
湿度を嫌うOD錠の賦形剤としては、最適な添加剤と思われますが、ハンドリングや成形性、打錠障害の生じやすさ等に課題がありました。

そこで、当社では、成形性と崩壊性を向上させる工夫をし、OD錠用直打賦形剤として、マンニトールの流動層造粒物であるグラニュトール®を開発しました。

グラニュトール®の特長は、安定形のβ型結晶からなるマンニトール100%の流動層造粒物で、圧縮成形性、流動性に優れています。マンニトール造粒物ですので、薬物との反応性が低く、服用感に優れるため、OD錠用賦形剤として最適です。

グラニュトールでは有効成分や、有効成分を含む造粒物の粒子径によって、最適なグレードを選択いただける様、平均粒子径が異なる、F, S, Rの3つのグレードをラインナップしています。

なお、規格としては日本薬局方「D-マンニトール」です。
※アメリカ、欧州薬局方への対応については別途ご相談下さい。

S、Rグレードも高い成形性を示していますが、粒径の細かいFグレードではさらに成形性が高くなっています。
崩壊時間についても、粒径の細かいグレードほど崩壊性に優れることを確認しています。

処方:
F…グラニュトール®:ステアリン酸マグネシウム=100:1.2
S・R…グラニュトール®:ステアリン酸マグネシウム=100:1.0

*打錠条件:ロータリー打錠機(12本立て)、 8φ -10R、200 mg/Tab、回転数 : 50rpm

薬の服用を容易にするOD錠は、急速な高齢化の進む日本で有用な剤形であるといえます。
OD錠技術の発展には、製剤技術と医薬品添加剤のどちらも必要不可欠です。

以下の資料では、グラニュトール®を用いた直接打錠によるOD錠の調製例、及び他の直打用マンニトールとの比較結果について紹介しております。
お問合せいただいた後、担当者より送付いたします。ぜひ、ダウンロードいただきご覧ください。

・GT各論第1報 グラニュトール®の打錠事例 口腔内速崩壊錠の処方例

星野 慎太郎

フロイント産業株式会社
カスタマー事業本部 添加剤営業部 東京添加剤営業課

フロイント産業入社以来、医薬品添加剤の営業に従事。
「お客さまが笑顔になれるコミュニケーションを心がけております」

キーワード: 医薬品業界 口腔内崩壊錠 小児用製剤 苦味マスキング 直打 医薬品添加剤 OD錠

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