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“苦味マスキング” バリアフリー製剤のための技術 添加剤 2021.06.25

“苦味マスキング” バリアフリー製剤のための技術

「良薬は口に苦し」という諺に使われてきたように、薬は苦味を持つことが多いものです。
病気を治すために必要とはいえ苦味を伴った薬は、患者さんの治療に対する姿勢を消極的にしてしまうことは容易に予想できます。

薬の苦味に対処する技術(苦味マスキング)と別の技術を組み合わせることで可能となる、今後目指すべきバリアフリー製剤*1についても、併せて本記事でご説明します。

*1 バリアフリー製剤:嚥下の難しい高齢者や小児にも服用しやすく、服薬アドヒアランス向上に寄与する製剤のこと。口腔内速崩壊錠、服薬補助ゼリーなどが挙げられる。

薬の苦味に対処し薬を飲みやすくする技術を、苦味マスキングといいます。

薬の苦味は、患者さんの治療に対する姿勢を消極的にする可能性があります。
そのため錠剤に対して苦味マスキングを行うことは、患者さんの負担軽減につながります。
従って苦味マスキングは、バリアフリー製剤のための技術の一つと言えます。

苦味マスキング技術には、いろいろな方法があります。
多く使われている方法として、主に次の5つがあります。

  • 甘味料や香料の添加
    添加する原料は安価でコストが抑えられるが、苦味マスキングが十分でない場合が多い。

  • カプセル剤
    完全に苦味マスキングできるが、錠剤のように圧縮しないため、製剤のサイズが大きくなり、小児や高齢者にとっては飲みにくくなる。

  • フィルムコーティング錠
    美観に優れるが、嚥下障害のある人には向かない。

  • 糖衣錠
    苦味だけでなく、においもマスキングする。

  • マスキング顆粒
    高度な製剤技術を要するものの、口腔内崩壊錠に混合・打錠すれば、水なしで飲めるのに苦味を感じにくい、高齢者や小児に優しい錠剤になる。

苦味マスキングは患者さんの負担軽減につながる。
今後優先して取り組む理由は、それだけに限りません。

日本だけでなく世界的にも高齢化が進む見込みがあり、長期的な視野に立ち、それに配慮していく必要があるからです。

詳しく見ていきましょう。高齢化は日本や、G7といった主要先進国だけの現象ではありません。経済成長が期待される中国やインドでも、将来的には生産年齢人口が減少へ転じる見込みとなっています。

つまり製剤設計においても、高齢者向け医薬品需要の増加と配慮が求められると予測できます。

では高齢者の錠剤服用を想定した時、何に配慮すべきでしょうか。
主な問題点と配慮としては、次があげられます。

  • 嚥下困難
    苦味マスキングとして効果が高いカプセル剤は嚥下力を必要とするため、薬は飲みやすい・のどに詰まらない形状が望ましい。

  • 手の震え
    粉薬や顆粒剤は錠剤に比べ扱いづらいため、服用時に扱いやすい形状が望ましい。

このような問題点を解決するバリアフリー製剤を製造するためには、苦味マスキング方法の選択は勿論のこと、苦味マスキングと別技術の組み合わせも検討する必要があります。


*2 出典:経済産業省ウェブサイト(https://www.meti.go.jp/report/tsuhaku2010/2010honbun/html/i2510000.html
高齢者向け医薬品(錠剤)の服用問題に対する解決策として、速やかに口腔内で崩壊させる技術(OD錠)があげられます。
バリアフリー製剤の一つであるOD錠は、唾液や少量の水があれば口の中で速やかに溶けるため、嚥下困難な患者さんにとって服用しやすい錠剤です。

しかし溶けやすい分、適切な苦味マスキングが施されていなければ、患者さんに苦味を感じるという負担をかけることになります。
そのため、苦味マスキングと別技術(OD錠)の組み合わせが必要となります。

OD錠を製造する場合、選択する苦味マスキング技術は次の2つが考えられます。

A) 甘味料や香料の添加
B) マスキング顆粒

Aは苦味マスキングとはでご説明したとおり、苦味マスキングが不十分となる可能性があります。
一方、Bのマスキング顆粒は、苦味成分を持つ原薬(API)をコーティングすることでマスキングします。

従ってBのマスキング顆粒がOD錠との組み合わせに適していると考えられ、2つの技術を組み合わせることでバリアフリー製剤の製造が可能になります。

苦味マスキング顆粒の製造では、以下の条件を備えた製剤用の核粒子が必要です。


  • できる限り球形であること
    (体積や表面積の計数化を可能にし、薬物の含量均一性や放出制御をコントロールしやすい)

  • 薬物との反応性が低いこと

  • 粒子径が小さいこと(口内崩壊時のざらつきを抑える)

球形顆粒ノンパレル®‐108の特長

弊社は、苦味マスキング顆粒の製剤用核粒子として必要な条件を備えた、ノンパレル®‐108をご提供しています。

・高い真球度
 体積や表面積の計数化が可能であり、薬物放出制御におけるフィルムの膜厚管理を容易にします。

・D‐マンニトール100%
 自然界に広く存在する糖アルコールの一種で、古くから甘味料として用いられてきました。
 化学的に安定しており自由水が少ないことから、薬物との反応性が低く、また完全に水に溶解します。

・シャープな粒度分布
 薬物レイヤリングを行う際に、粒度分布がシャープな顆粒を得ることができます。

・平均粒子径約100 µm
 薬物の含量均一性確保に有用です。

真球度の高い製剤用各粒子の製造技術について、弊社は世界トップランナーであり多数の採用実績を持っています。

患者さんの負担を軽減する苦味マスキングは、これからの高齢化を視野に入れたバリアフリー製剤の需要ともつながります。

以下の資料では、弊社装置を用いてノンパレル®‐108へ苦味マスキングを施した顆粒による、OD錠の調製例の資料をご覧いただけます。
資料では、小さい粒子径を使用した際に起こりやすい問題(凝集)を解決する条件例も記載しています。
是非ダウンロードいただきご覧ください。

  • NP各論第6報(140930改訂).pdf

また精緻なコーティングを可能にする技術・装置もご提供しております。
関連製品をご覧ください。

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