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時間短縮を目的とした新たな微粒子コーティング手法 添加剤 2025.02.28

時間短縮を目的とした新たな微粒子コーティング手法

微粒子コーティングでは流動層を使用したスプレーコーティングが汎用されています。しかしコーティングに使用する核粒子が小さくなればなるほど比表面積が大きくなり、コーティング中に粒子同士が凝集してしまう傾向が見られます。それを防ぐため、より穏和な条件でのコーティングが必要となり、その結果としてコーティング工程に要する時間が延長します(参考:核粒子の大きさが製剤設計へ与える影響)。
本記事では、スプレーコーティングによる微粒子コーティングの課題を解決するため、撹拌造粒機を用いた短時間でコーティング可能な粉末レイヤリング法をご提案いたします。

佐藤 綾香(Sato Ayaka)

フロイント産業株式会社
化成品開発部 開発課

粉末レイヤリング法とは、コーティングの時間短縮を目的に開発された、攪拌造粒機を用いた新たな微粒子コーティング方法の一つです。本記事では高速攪拌造粒装置グラニュマイスト:GM-Multi(フロイント産業)を用いて、平均粒子径が約80µmの弊社製品である微小核粒子ノンパレル-MM(80)へのAPIおよびポリマーのコーティングについてご紹介します。

粉末レイヤリングでは、核粒子の湿潤工程、レイヤリング粉末の添加・混合工程、造粒工程を繰り返し、核粒子に対してAPI※1やポリマーをコーティングします。
ポリマーのキュアリング※2工程も本装置中で完結する、非常にシンプルな微粒子コーティング方法です。

※1 API:医薬品有効成分(Active Pharmaceutical Ingredient)
※2 キュアリング:加熱による成膜工程

 

核にはノンパレル-MM(80)を使用し、APIとして水溶性のアセトアミノフェンを30%レイヤリングしました。この時バインダーには3%HPC-SSL水溶液を用いました。また、APIレイヤリングでは任意のレイヤリング粉末が積層された後、装置から取り出し、流動層にて乾燥しました。

粉末レイヤリング法によりAPIをレイヤリングした顆粒は、平均薬物含量が100%前後であり、問題なくAPIレイヤリングが可能でした。また、API 30%にかかるレイヤリング時間は31分と、スプレーコーティングと比較して顕著に短縮されました。

服薬アドヒアランスを向上させる一つの手法として、APIの苦味マスキングが行われます。しかし、服薬時にざらつきを感じないような小さな顆粒へ苦味マスキングを行う際には高度な製剤技術と膨大な製造時間が必要です。
そこで攪拌造粒機内でレイヤリングからキュアリングまで完結可能な方法を開発しました。

本事例では粉末レイヤリングにて調製したアセトアミノフェン30%レイヤリング顆粒に対して、ポリマー(EUDRAGIT E PO:Evonik Industries AG)を40%レイヤリングし、薬物顆粒の苦味マスキングを実施しました。

粉末レイヤリング法を用いたポリマーレイヤリングは、約20分で完了しました。キュアリング時間と併せても100分以内と非常に短時間でレイヤリングが可能なことを確認しました。

また、粉末レイヤリングにて調製した苦味マスキング顆粒の溶出プロファイルを確認したところ、顆粒投入から1分後の初期溶出率は10%以下であり、粉末レイヤリングでも問題なくAPIおよびポリマーのレイヤリングができていることを確認しました。

本記事では、時間のかかる微粒子コーティングの課題解決のため、新たなレイヤリング方法である粉末レイヤリング法をご紹介しました。
粉末レイヤリング法を用いれば、APIやポリマーのレイヤリング時間を大幅に短縮でき、作業効率の向上が期待できます。また、簡易にAPI高含量顆粒も調製可能であるため、より患者さんに寄り添った製剤開発の一助にもなると考えています。

以下の資料では、新製品であるノンパレル-MM(80)のご紹介と粉末レイヤリングの詳細についてご覧いただけます。
ご興味がございましたら、ぜひ下記よりダウンロードしてご覧ください。

キーワード: 流動層造粒 流動性向上 医薬品業界 造粒 苦味マスキング 医薬品添加剤

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