覚えておきたい製剤技術の基礎知識! 第5章:錠剤コーティング装置(ハード) FREUND Academy 2023.09.22
FREUND KNOWLEDGE OCEANをご覧頂き誠にありがとうございます。
FREUND Academy Instructorの武井でございます。
このFREUND Academyでは、製剤に関するベーシックな知識を全10章に分けてお送りいたします。
前回、前々回は、流動層造粒について、装置(ハード)と技術(ソフト)に分けてお伝えしました。今回は、コーティング装置について詳しくお伝えいたします。概要から主要な装置部品について記載しており、また記事下部では、当社の主力コーティング装置、HICOATER®HV (ハイコーターハイファイブ)についての詳しいホワイトペーパーをダウンロードしていただけますので、是非最後までお付き合いください。
まだご覧でない方は、
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1.コーティング装置の概要
2.コーティングパン
2.1 パンの形状
2.2 バッフル
2.3 パンチング板
3.スプレーノズル
3.1 フィルムコーティング用スプレーノズル
3.2 スプレー高さ調節
4.空気の流れ
4.1 風量の増加
4.2 給気方式
2.1 パンの形状
2.2 バッフル
(1)バッフルの種類
下記に錠剤コーティング装置で汎用されるバッフル形状を示します。
(2)ゼロクリアランス
丸パンにバッフルを取り付ける場合、パン内面とバッフル下部の隙間(クリアランス)を設けるほうが、パン内面とバッフルの隙間をなくす(ゼロクリアランス)よりも加工、組み立てが容易です。しかし、クリアランスを設けると、その隙間を錠剤が通過する際に摩損するリスクがあります。ハイコーター(HC-100N)を用いて、クリアランスの有無と摩損の関係を実験した結果を紹介します。
図4に実験に用いたバッフルの外観を、表1,2に実験に用いた錠剤の処方と物性を示します。
図5は素錠A,B,Cそれぞれの摩損度に及ぼすクリアランスの影響を示します。
クリアランス30mmはゼロクリアランスに比べ、いずれの場合も摩損度が大きくなることが確認されました。
3.1 フィルムコーティング用スプレーノズル
(1)液体の微粒化
フィルムコーティング用スプレーには、圧縮空気で液体を微粒化する二流体ノズルが汎用されています。
液体(コーティング液)と気体(圧縮空気)の2種類の流体を使用するので二流体ノズルと呼ばれます。
1970~1980年代には、コーティング液を加圧しオリフィスから吐出するタイプの加圧ノズル(エアレスノズル)も使用されていましたが、液量の可変範囲が狭いことやノズル先端の摩耗の問題で、ほとんど使用されなくなりました。(加圧ノズルは小さなオリフィスからコーティング液を勢いよく吐出させることで液体を微粒化させますが、吐出量を絞ると勢いが小さくなり微粒化できなくなるので、液速を変化させたいプロセスには不向きです)。
(2)スプレーパターン
一般に、二流体のスプレーノズルのスプレーパターン内における噴霧液の密度分布は均一ではなく、図7aのようにノズルの真下に多くスプレーされ、パターンの端部にスプレーされる量は少なくなります。ノズル直下で局所濡れによるコーティング不良が発生しない液速度が、ノズル1個当たりの適性スプレー量と考えられ、スプレー供給速度はノズル直下の局所濡れが律速になっていました。
従来、隣接するスプレーパターンが重ならないようにノズル間隔が設定されていましたが、スプレー供給速度を増加する手段として、図7bに示すように小型ノズルを多数設置し、スプレーパターンの端部を重ねる方法を検討し、有効であることが確認されています。
(3)スプレー配管収納ケース
それぞれのスプレーノズルには液ホース(In,Out)と圧縮空気ホース(アトマイズエアー、パターンエアー、シリンダーエアー(スプレーのon/offの切り替え信号用圧縮空気))がつながっています。これらのホース(配管)がパン内部でむき出し状態だと、コーティングダストによる汚れや錠剤がホースの上に堆積する原因になるので、配管を収納するケースが使われています。アクアコーターのガンボックス、HICOATER® FZのマルチファンクションホルダーが、この収納ケースに該当します。これら収納ケースの外観を図10に示します。
収納ケースのほか、樹脂ブロック内をくり抜いて液と空気の通り道にする「マニホールド」タイプのノズルシステムも開発され、HICOATER® HVに採用されています。
3.2 スプレー高さ調節5,6)
4.2 給気方式
装置の乾燥能力を大きくするには大風量の給気が必須条件になります。
一般的に風量を大きくすると、コーティングパン内部で気流の乱れを誘発します。気流が乱れると、スプレーミストが流され錠剤表面への付着率が低下し、パン内部の汚れの原因にもなります。
したがって、コーティングパン内の気流の乱れを小さくする工夫がなされます。また、糖衣コーティングでは、糖衣液は温度の高い部分に付着するという性質があるので、コーティングパンを温めないことが求められます。
HICOATER® FZでは、パンを温めないようにマウスリング給気(図13a)を採用していますが、マウスリング部を通過する空気速度が大きいと慣性力でパン後部方向に給気が流れるので、それを緩和するために給気チャンバー容積とマウスリング口径を大きくして、パン後部方向への慣性力の軽減を図っています。HICOATER® HVでは、パン後部方向への慣性力をなくすことのできる並流給気(図13b)を採用しています。
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第5章は、錠剤コーティング装置の概要、部品、仕組みについてご説明しました。
最後までご覧いただきありがとうございました。
次回、第6章は錠剤コーティング技術(ソフト)についてお伝えします。
このコンテンツが製薬業界の更なる進歩発展の一助となれますよう、心を込めて執筆いたします。
次回もお付き合いくださいますよう、よろしくお願い申し上げます。
参考文献
1)医薬品製剤化方略と新技術Ⅱ:P184,シーエムシー出版(2013)
2)中村卓也、鵜野澤一臣、武井成通:PHARM TECH JAPAN,13,2045(1997)
3)鵜野澤一臣、安達岳郎、平井由梨子、磯部重実、武井成通:粉体工学会誌,47,421(2010)
4)鵜野澤一臣:製剤機械技術学会誌,20,359(2011)
5)製剤の達人による製剤技術の伝承、製剤設計・製剤技術の新たな潮流:P190,じほう(2017)
6)武井成通:PHARM TECH JAPAN,29,2273(2013)
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