食べなくても分かる?バウムクーヘンの「しっとり感」の測定方法 食品品質保持剤 2023.12.25

アンチモールド・マイルド®は、エタノールを含有した粉末を小袋に充填したものです。
その小袋からエタノールガスが徐々に蒸散して、食品に付着している微生物の繁殖を抑制し、カビ等の発生を防ぎます。
また、食品の「やわらかさ」と「しっとり感」を保持する効果があるため、焼き菓子やパンと相性が良いです。
本記事では、エタノール蒸散剤による食品の「しっとり感」の評価技術と保持効果についてご紹介します。
本記事の内容はフードケミカル2023年10月号Vol.39, No.10に掲載されています。
- 「しっとり感」の試験方法について
- 試験方法① 官能試験
- 試験方法② 物性試験
- 官能試験と物性試験の「しっとり感」の測定
- まとめ
食感の評価方法の中で、「やわらかさ」はテクスチャーメーターで圧縮する数値化の方法が一般化されていますが、「しっとり感」は数値化の例は少なく、一般的に認識されている評価法はまだありません。
化粧品の触感における「しっとり感」の測定方法は、摩擦評価装置によって物理的なメカニズムが山形大学の野々村教授により報告されています。
弊社では、山形大学の野々村教授の指導の元、食品の食感における「しっとり感」を評価する方法として、食品の表面を摩擦する方法を検討しています。
分析で得られる波形を解析した結果、本方法が、バウムクーヘンの「しっとり感」の客観的な評価方法として利用できる可能性があることが示唆されました。
8名をパネラーとしてブラインドでサンプルの「しっとり感」をそれぞれ比較し、「しっとりしていない」を-6、「しっとりしている」を6としました。
それを13段階尺度で定量化し、平均値を「しっとりスコア」としました。
今回紹介する「しっとり感」の測定には、テクスチャーメーターという物性試験機を用いました。
【測定条件】
機器:テクスチャーメーター RE2-33005C(山電製)
摩擦速度:1mm/sec
摩擦距離:10mm(1往復)
検体接触部:全面天然ゴム
荷重:50g(水平にして測定)
食品のサイズ:縦20mm×横20mm×高さ15mm(測定時、下部を固定)
「しっとり感」の物性測定には、摩擦試験を行い、バウムクーヘンの上部を水平方向に摩擦して、摩擦波形から得られる「遅れ時間※」の値を測定しました。
官能試験および物性試験の結果、摩擦試験の遅れ時間としっとりスコアの関係は下図通りです。
➀エタノール蒸散剤(アンチモールド・マイルド20) ②エタノール蒸散剤(アンチモールド・マイルド40) ③脱酸素剤(ネガモールドZS100) ④乾燥させたDry品
官能試験で得られる「しっとりスコア」の順は②MD40>①MD20>③ZS100>④Dry品でした。
物性試験の「遅れ時間」の順も②MD40>①MD20>③ZS100>④Dry品であり、「しっとりスコア」の順と同様でした。
今回のデータでは、摩擦測定によって得られる値「遅れ時間」が、バウムクーヘンの「しっとり感」と高い相関が得られ、評価法として利用できる可能性があることが示唆されました。
今回の試験結果からもアンチモールド・マイルド®は食品の「しっとり感」の保持効果を有していることがわかりました。
食品の安全・安心の確保や食品ロスの削減に加え、「しっとり感」を保持しつつ脱酸素剤機能で食品の酸化を防ぐネガモールド®をラインナップしております。
食品のフードロス削減や「やわらかさ」、「しっとり感」保持にご興味のある方はお問い合わせください。
本研究の遂行にあたり、学術指導を賜った山形大学大学院工学部野々村美宗教授に深謝の意を表します。
山形大学野々村教授研究室のリンク
キーワード: