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フロイントグループ創業からの知識の海

パンの日持ち延長!今お使いの包装を活かせる品質保持剤の選び方と使い方 食品品質保持剤 2026.03.10

品質保持剤でパンの日持ち延ばせます

「もう少し日持ちすれば、廃棄ロスを減らせるのに…」「遠方の店舗でも販売したいけれど、日持ちが短い…」 パンの製造・販売について、このような課題をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
もし、今お使いの包装資材を変えることなく、手軽にパンの日持ちを延ばせるとしたら?
本記事では、パンの品質保持に大きな効果を発揮する「エタノール蒸散剤」と「脱酸素剤」について、包装フィルムの適性や保存試験の例をお示しし、日持ちを延長するためのヒントをお届けします。

斉藤 義人(Yoshihito Saito)

フロイント産業株式会社
品質保持剤事業本部 品質保持剤開発部

1992年入社後、食品品質保持剤について、開発を中心に、技術全般の業務を担当。

1. はじめに:なぜパンの日持ち向上が求められるのか?

2. その包装、そのまま使えます!エタノール蒸散剤とパン用フィルムの適性
- エタノール蒸散剤に適切な包装フィルムとは?
-【実験データで見る】菓子パンの包装(OPP)はそのまま使用可能
-【実験データで見る】食パンの包装(IPP)も短期的な日持ち向上なら効果あり
- 注意!エタノール蒸散剤に向かない包装材とは?
- ワンポイントアドバイス:ヒートシールの注意点

3. より確実な保存には「脱酸素+エタノール蒸散」という選択肢
- 相乗効果でさらに強力に!「ネガモールド」の静菌力
-「ネガモールド」には酸素バリア性の包装フィルムが必須

4. まとめ

食品廃棄ロス、この問題は「もったいない」という話にとどまらず、経済的損失や環境負荷にも繋がる社会的な課題です。2019年には「食品ロス削減推進法」が施行され、社会全体で削減に向けた取り組みが進められており、一定の成果が挙げられていますが、依然として多くの食品が廃棄されているのが現状です。

私たちの食生活に欠かせないパンは「日配品」と呼ばれ、その多くが製造から2~5日という消費期限になっています。そのため、販売できる期間が短く売れ残りが発生しやすくなっています。廃棄ロスとなったパンは飼料や肥料などとして再資源化する取り組みが行われていますが、廃棄ロスはできるだけ出ないことが望ましいといえます。また、地域で販売される特色のある人気のパンがあっても、遠隔地まで配送して販売するには日持ちの時間が足りず、拡販が難しくなっています。

心を込めて焼き上げたパンが、廃棄ロスになることは、製造に携わる方々にとって大変残念なことでしょう。また、人気のおいしいパンであれば、遠くの消費者の方にも食べていただきたいと思われるのではないでしょうか。この記事では、パンの「日持ち」を向上させ、食品ロス削減に貢献する「品質保持剤」の活用ポイントについて、詳しく解説していきます。

「日持ちを延ばすには、特別な包装フィルムに変えなければならないのでは?」 そう思われるかもしれませんが、現在お使いのパン用包装(包装フィルム)は、エタノール蒸散剤(アンチモールドなど)を使用する包装として、適しているものが多いです。

エタノール蒸散剤は、包装の中に食品由来のエタノール(アルコール)ガスを蒸散し、カビなどの微生物の増殖を抑制する品質保持剤で、包装フィルムは、保存期間中、エタノールガス濃度が減少しないようにすることが求められます。
そのためエタノール蒸散剤用の包装フィルムは、エタノール透過度が「10 g/m²・day(40℃)」以下であることが推奨されます。 では、パンの包装に一般的に使用されるフィルムは、この目安に適合しているでしょうか。

菓子パンなどで広く使われている透明で少しシャキシャキ感のあるフィルムは、OPP(延伸ポリプロピレン)と呼ばれる素材です。このOPPフィルムは、エタノールガスバリア性に優れており、エタノール蒸散剤を使用した包装に適しています。
下のグラフは、クロワッサンをOPP袋(厚さ30 μm)に入れ、エタノール蒸散剤(アンチモールド・マイルド:MD)の有無やサイズ(内容粉量)を変えて保存した際の、袋内エタノールガス濃度とカビの発生状況を示した実験結果です。

製造日から12日後の様子

MD無添付
カビ発生(繁殖が進んでいる)

MD03
カビ発生

MD06
異常なし

MD無添付(品質保持剤なし)
製造6日後にはカビが発生。12日後には異臭も感じられました。

MD06添付
袋内のエタノールガス濃度が適切に保たれ、12日後もカビや異臭はなく、正常な状態を維持。無添付品と比較して、明らかに日持ちが向上しました。

MD10, MD15添付
さらに大きいサイズのエタノールを封入したタイプでは、袋内エタノールガス濃度がMD06より高い濃度で維持され、38日後までカビ発生などの異常は見られませんでした。

この結果から、菓子パンで一般的に使用されるOPP袋は、エタノールガス濃度を安定して保持できることがわかります。つまり、包装を変更することなく、適切なサイズのエタノール蒸散剤を追加するだけで、日持ち向上が期待できるといえます。

食パンに一般的に使用されている、少し柔らかいフィルムはIPP(インフレーションポリプロピレン)です。このIPPフィルムのエタノール透過度は10 g/m²・day(40℃)を少し超えます。それでも短期的にはエタノールガス濃度を維持できます。

右のグラフは、食パンをIPP袋に入れ、エタノール蒸散剤を添付した際のエタノールガス濃度の変化を示したものです。簡易包装であるポリエチレン(PE)袋と比較しています。

IPP袋でも3週間目以降徐々に濃度が低下し始めますが、例えば「消費期限を数日程度延ばしたい」といった短期的な日持ち向上であれば、現在のIPP袋をそのまま活用できる可能性があると言えます。

簡易包装や家庭でも使われるPE(ポリエチレン)袋はどうでしょうか。グラフのように厚手のPE袋(60 μm)であっても、エタノールガス濃度が徐々に低下して、14日後にはカビが発生しました。キッチン用の薄手の袋(20 μm)では、エタノールガス濃度の低下が目立ち7日でカビが発生しています。 これは、20 μmのPEフィルムのエタノール透過度が50 g/m²・day(40℃)以上と高く、エタノールの抜けが速いためです。

品質保持剤を使用する上で注意したいのが「ヒートシール」です。熱が弱すぎると、容易に開封してしまい、逆に熱がかかりすぎるとフィルムが変形して切れることがあります。どちらもエタノールが抜けやすくなり保存性に影響します。

ヒートシール状態の比較:IPPフィルムの例

シール状態不良
熱が強すぎ、フィルムが溶けて切れかかっている

シール状態良好

IPPフィルムは熱で溶融して変形したり切れたりしやすいので特に注意が必要です。適切なシール温度管理を徹底することが、品質を安定させる上で非常に重要です。

「日持ちをより長くしたい」 「カビ以外に細菌等が増えやすいパンを保存したい」
このような場合には、脱酸素とエタノール蒸散の機能を併せ持つ複合タイプの品質保持剤「ネガモールド」が有効です。

脱酸素剤は、袋の中の酸素を吸収し、カビなどの好気性菌を静菌します。これにエタノールが加わることで、相乗効果により、単機能の品質保持剤よりも強い静菌力を発揮し、より確実に菌の増殖を抑制します。 

脱酸素機能とエタノール蒸散機能を併せ持つ品質保持剤を使用する場合、包装フィルムにはエタノールガスバリア性に加えて酸素ガスバリア性も求められます。袋の外からの酸素の流入が多いと脱酸素し切れず、無酸素状態にできなくなるためです。 「ネガモールド」には、バリアナイロンなどの酸素バリア性に優れた素材を含む多層フィルムが適しています。
どのフィルムを選べばよいかわからない場合は、弊社へご相談ください。

適切なフィルムの材質については、次の記事もご参照ください。

※水分活性値が0.94を超え、pHが4.6を超え、120℃ 4分相当以上の殺菌処理がされていない食品に脱酸素剤を使用することに関しては、厚生労働省通知「容器包装詰低酸性食品に関するボツリヌス食中毒対策について(2003年)」がありますので、十分ご注意ください(該当食品は原則として冷蔵もしくは殺菌処理を行う)

パンの日持ちを向上させるための品質保持剤、特にエタノール蒸散剤の活用ポイント

  • 菓子パンのOPP袋や食パンのIPP袋は、エタノール蒸散剤用の包装に使用できる。適切な温度でのシールが大切。
  • より確実な静菌効果を求める場合は、「脱酸素+エタノール蒸散」の複合タイプが有効。酸素バリア性の袋を使用する。

品質保持剤を使用することで、日持ちが向上し、食品ロスを削減できますが、それにとどまらないメリットがあります。

  • 機会損失の軽減:日持ちが短いことによる販売機会の損失を軽減します。
  • 販路拡大:日持ちが延びることで、これまで難しかった遠隔地への配送が可能になります。
  • 流通コスト削減:菌の増殖が抑制されることで、冷凍・チルド流通から常温流通への切り替えが検討でき、物流コストの削減に繋がります。
  • 品質向上:エタノールにはパンのやわらかさやしっとり感の低下を緩和する効果も期待できます。

お客様に、いつでも美味しいパンを届けたい。その想いを、品質保持剤という技術が力強くサポートします。

「自社のパンに合う品質保持剤はどれ?」 「実際にどれくらい日持ちが延びるのかテストしてみたい」
このようなご要望がございましたら、お気軽にお問い合わせください。お客様の製品と課題に合わせた最適なソリューションをご提案します。

以下のリンクは、ポリプロピレンフィルムに関する情報を提供する外部サイトです。ご興味のある方はぜひご覧ください。

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