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包装フィルムが品質保持剤の効果を最大にする!カビを防ぐための基礎知識と選び方 食品品質保持剤 2025.11.06

包装フィルムが品質保持剤の効果を最大にする!カビを防ぐための基礎知識と選び方

業者に選定してもらったが、品質保持剤用に適性があっているのか心配、もっと商品にマッチしたフィルムに代えたいがよくわからないとの声をお聞きすることがあります。

脱酸素剤やエタノール蒸散剤といった品質保持剤は、食品の品質やおいしさを守るためのツールです。しかし、その効果を最大限に引き出すには、中身の食品だけでなく、それを包む「包装フィルム」の選択が重要になります。

この記事では、食品の品質保持に長年携わってきた専門家が、品質保持剤の効果を十分に発揮させるための包装フィルムの選び方を、基礎知識から実践的なポイントまで分かりやすく解説します。適切なフィルム選定で、お客様に安心・安全な商品を届け、フードロス削減にも繋げましょう。

斉藤 義人(Yoshihito Saito)

フロイント産業株式会社
品質保持剤事業本部 品質保持剤開発部

1992年入社後、食品品質保持剤について、開発を中心に、技術全般の業務を担当。

なぜ、包装フィルムの選定が重要なのでしょうか。不適切なフィルムを使用してしまった場合の事例を見てみましょう。

脱酸素剤は、包装内の酸素を吸収し、酸素濃度を0.1%以下の「無酸素状態」にすることで、カビの発生や食品の酸化を防ぎます。しかし、フィルムの酸素バリア性が低い(酸素透過度が高い)と、包装の外からの酸素の流入が多くなり、脱酸素剤の酸素吸収能力(無酸素状態を維持する能力)が大きく消耗します。
その結果、包装内の酸素濃度が上昇し、カビの発生や油脂の酸化といった品質劣化を招いてしまいます。

エタノール蒸散剤は、包装内にエタノールガスを蒸散しカビの生育を抑制します。しかし、フィルムのエタノールバリア性が低い(エタノール透過度が高い)と、エタノールが包装の外へ抜けて飛散する量が多くなります。
包装内のエタノール濃度が低下するとカビが発生するリスクが高まります。

バリア性の高いフィルムを選んでも、包装のシールが不完全だったり、流通過程でピンホールが生じてしまったりすると、そこから酸素が流入したりエタノールが飛散したりします。特に酸素は分子が小さくピンホールから流入しやすいため、フィルムの材質だけでなく、シールの完全性も非常に重要です。

では、具体的にどのようなフィルムを選べば良いのでしょうか。まずは、食品包装でよく使われる基本的な樹脂フィルムの種類と、その特徴を理解しましょう。食品包装フィルムは、単一の素材(単層)で使われる場合と、複数のフィルムを貼り合わせた「ラミネートフィルム」として使用される場合があります。

以下に、食品包装に使用される主な樹脂フィルムの特徴をまとめました。


「OPP(シーラブルOPPを除く)」や「PET」、「Ny(PA)」には熱シール性がないため、これらのフィルムは単体で袋にすることはできず、「LDPE」や「CPP」といった熱シール性のあるフィルムと貼り合わせて使用されます。

「OPP」や「PET」、「Ny(PA)」には一定の防湿性やガスバリア性がありますが、表面処理により、バリア性を高めてハイバリアにする技術があり、広く使用されています。品質保持剤(特に脱酸素剤)を使用した包装用には、ハイバリアフィルムが求められます。

※蒸着:真空または低圧下でアルミニウムやケイ酸などを揮発もしくは化学反応させて、フィルム表面に薄膜を形成する方法
※単に“バリア ナイロン“と言った場合、MXD-6系であることが多いですが、ほかの方法を用いたものもあります。

では、具体的にどの程度のバリア性(透過度)が必要なのでしょうか。当社では、品質保持剤のタイプに応じて、以下のような物性値を推奨しています。

※酸素透過度
フィルムメーカーの物性表に記載されている数値です。これは1㎡のフィルムを1日で透過する酸素の量」を示しており、数値が小さいほどバリア性が高いことを意味します。
なお、気圧の単位について、物性表に記載されていない(1気圧)か、旧単位系のatm表示の場合は“20mL/㎡・day・atm”以下が基準となります。

※エタノール透過度
フィルムメーカーの物性表には一般的に記載されていない、当社独自の基準値です。ご使用のフィルムがエタノール蒸散剤に適しているかご不明な場合は、ぜひ当社までお気軽にお問い合わせください。

ここまでの知識をもとに、実際のラミネートフィルムの構成例と、品質保持剤への適性を見ていきましょう。

【記号の見方】 ○:適している △:注意して使用(保存試験で適性を十分確認する) ×:適していない

この表から、一般的な「OPP/CPP」構成では、脱酸素剤には不適ですが、エタノール蒸散剤には適していることが分かります。一方で、蒸着処理などを施したハイバリアフィルムは両方の品質保持剤に使用できることがわかります。

商品に使用するフィルムの適性が不明な場合は、当社にご相談ください。

食品の品質を長期間維持するためには、品質保持剤の能力を最大限に引き出す包装フィルムの選定が不可欠です。最後に、本記事の重要なポイントを振り返ります。

  • 不適切なフィルムは品質保持剤の効果を低下させる
    酸素透過度が高いフィルムやエタノール透過度が高いフィルムでは、カビや酸化を十分防げません。

  • フィルムの基本特性を理解する
    フィルムにはそれぞれ特性があり、ラミネートフィルムは、複数の樹脂フィルムの組み合わせでできています。

  • 「バリア性(酸素透過度とエタノール透過度)」が重要
    脱酸素剤には「酸素バリア性(低い酸素透過度)」、エタノール蒸散剤には「エタノールバリア性(低いエタノール透過度)」が求められます。

  • 具体的な数値基準で判断する
    推奨される酸素透過度やエタノール透過度の基準値を満たすフィルムを選びましょう。

食品の包装は複雑に思えるかもしれませんが、基本となるフィルムの特徴とバリア性の組み合わせを理解すれば、適切な選定が可能になります。フィルムの選定に迷った際や、現在お使いの包装で品質上の課題を感じている場合は、ぜひ私たちフロイント産業にご相談ください。専門のスタッフが、お客様の製品に最適な品質保持剤と包装のソリューションをご提案します。

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