覚えておきたい製剤技術の基礎知識! 第9章:医薬品添加剤 FREUND Academy 2025.02.06

FREUND KNOWLEDGE OCEANをご覧いただき誠にありがとうございます。
FREUND Academy Instructorの武井でございます。
このFREUND Academyでは、製剤に関するベーシックな知識を全10章に分けてお送りします。
前回8章は、物性測定についてお伝えしました。今回は、医薬品添加剤について詳しくお伝えいたします。
皆さまにお役立て頂けるホワイトペーパーもございますので、今回も是非最後までお付き合いください。
まだご覧になっていない方は、
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1. 医薬品添加剤とは
1.1 医薬品添加剤の定義
1.2 日本薬局方とは
1.3 国内で使用できる医薬品添加剤
1.4 医薬品添加剤を変更するリスク
2. 医薬品添加剤の種類と用途
2.1 医薬品添加剤に求められる条件
2.2 医薬品添加剤の種類
2.3 医薬品添加剤の役割
3. 医薬品添加剤とGMP
3.1 医薬品添加剤GMP自主基準
3.2 医薬品添加剤GMP監査の実施例
3.2.1 医薬品添加剤GMP適合審査会
3.2.2 医薬品添加剤GMP監査情報共有システム
3.2.3 GABにおける調査の方法
1.2 日本薬局方とは2)
「日本薬局方」ホームページに次のように記載されています。
「日本薬局方は、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保に関する法律※第41条により、医薬品の性状及び品質の適正を図るため、厚生労働大臣が薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて定めた医薬品の規格基準書です。日本薬局方の構成は通則、生薬総則、製剤総則、一般試験法及び医薬品各条からなり、収載医薬品については我が国で繁用されている医薬品が中心となっています。
日本薬局方は100年有余の歴史があり、初版は明治19年6月に公布され、今日に至るまで医薬品の開発、試験技術の向上に伴って改訂が重ねられ、現在では、第十八改正日本薬局方が公示されています。」
※医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保に関する法律の略称は、薬機法=旧薬事法
(出典:厚生労働省ホームページ )
1.3 国内で使用できる医薬品添加剤3)
医薬品添加剤として使用される物質として、日本の医薬品添加剤情報をまとめた「医薬品添加物事典2021」に、医薬品添加剤成分1,442品目が収載されています。添加物事典には使用前例がある添加剤が収載され、個別の添加剤ごとに「投与経路」、「最大使用量」が記載されています。記載された「投与経路」、「最大使用量」の範囲内であれば、特別なデータを提出することなく医薬品への使用が認められています。国内では、「日本薬局方(日局)」、「医薬品添加物規格(薬添規)」、「日本薬局方外医薬品規格(局外規)」、に収載された物質、および、それ以外で厚生労働省に認可を受けた物質、たとえば原薬等登録原簿(マスターファイル)4)に登録された添加剤が、医薬品添加剤として使用できます。マスターファイルには、新規添加剤のほか、従来と配合割合が異なるプレミックス添加剤が登録できます。
一方、使用前例のない物質を添加剤として使用する場合、あるいは使用前例があっても投与経路が異なったり、前例を上回る量を投与したりする場合には、安定性や安全性に関する試験データなどを医薬品製剤の申請の際に厚生労働省に提出して審査を受け、承認を得る必要があります。
1.4 医薬品添加剤を変更するリスク
医薬品添加剤は、それ自体は無害であっても、添加剤を変更することで主薬の作用が増幅し副作用が発現する事例や、逆に作用が低減し薬効がなくなる事例が報告されています5)。
2.1 医薬品添加剤に求められる条件
医薬品添加剤に求められる条件として、次の項目が考えられます5)。
・ その製剤の投与量において無害である。 ・ 有効成分の治療効果を阻害しない。
・ 試験に支障をきたさない。 ・ 製剤技術的機能を有する。
・ 実用的な量で使用できる。 ・ 薬理活性を持たない。
・ 物理的・化学的に安定である。 ・ 生体内に滞留や蓄積しない。
・ 有効成分との相互作用がない。 ・ 発がん性、抗原性がない。
2.2 医薬品添加剤の種類
使用目的別に分類した医薬品添加剤の種類を表1に示します6)。
2.3 医薬品添加剤の役割
医薬品添加剤の目的は次の3つに大別されます。
- ①剤形を構成するため
- ②製剤化または製剤特性を付与するため
- ③製剤の安定化と生理的性状を改善するため5)
3.1 医薬品添加剤GMP自主基準7,8)
2021年4月に厚生労働省から発出された改正GMP省令では、「原料等の供給者管理」が記載され、医薬品の製造業者は、医薬品添加剤についても適切な管理が求められています。しかし、医薬品添加剤は人体に対する作用が緩和で、その製造におけるGMPが法制化されていません。
そこで、日本医薬品添加剤協会では、医薬品添加剤の国際的な標準と考えられるIPEC-PQG合同GMPガイド2006を参考に、「医薬品添加剤GMP自主基準2014」を策定しました。この自主基準は、2016年に厚生労働省の事務連絡として発出されています。また、この自主基準は「医薬品添加剤GMP自主基準2016」に改定されています。
3.2 医薬品添加剤GMP監査の実施例7,9)
3.2.1 医薬品添加剤GMP適合審査会
医薬品添加剤GMP適合審査会(GMP Auditing Board for Pharmaceutical Excipients 略称GAB)は、医薬品添加剤GMP自主基準の実施状況を客観的に評価するために、2005年に発足した独立機関です。GABは、「医薬品添加剤GMP監査基準2022」を作成し、その基準に則り、医薬品添加剤を製造する企業について、そのGMP実施状況を評価し、評価結果に基づき「認定」を行うことにより、わが国の医薬品添加剤の品質確保と医薬品添加剤製造企業の信頼性を高めることを目的にしています。「医薬品添加剤GMP監査基準2022」の構成を表4に示します。

3.2.3 GABにおける調査の方法
GABでは、医薬品添加剤を製造する企業のGMP管理と製品品質について次のように確認しています。
(1)初回確認(実地調査)
該当する添加剤製造所および対象品目が、医薬品添加剤GMP監査基準に係わる業務が適正に遂行されているか、重要事項が適切に管理されているかについて、現場および文書・記録類の確認を行います。
(2)定期的な確認(3年毎 実地調査)
前回の指摘事項、変更された事項、逸脱が生じた事項を含めて、重要事項が適切に管理されているかについて実地で確認します。
(3)随時確認
問題発生時等に、必要に応じ随時実施します。
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第9章は、医薬品添加剤についてご説明しました。最後までご覧いただきありがとうございました。
次回はいよいよシリーズ最終回、第10章 口腔内崩壊錠(OD錠)について説明予定です。
このコンテンツが製薬業界の更なる進歩発展の一助となれますよう、心を込めて執筆いたします。
次回もお付き合いくださいますよう、よろしくお願い申し上げます。
参考文献
1)第18改正日本薬局方:製剤総則
2)日本薬局方ホームページ
3)日本ジェネリック製薬協会ホームページ 医薬品添加剤について
4)独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA)、原薬等登録原簿(MF)
5)医薬品添加剤要覧:薬業時報社(現じほう社)(1992)
6)医薬品添加物事典2021:日本医薬品添加剤協会 編集,薬事日報社
7)長江晴男:製剤機械技術学会誌,31,527(2022)
8)櫻井信豪ら:PHARM TECH JAPAN,38,2477(2022)
9)医薬品添加剤GMP適合審査会、GAB認定審査とPEGASS監査二つのシステム
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